「小さい頃、一緒によく遊んだのを覚えていますか」
新郎新婦が、親族のひとりひとりに語りかけます。
ただ紹介するだけでなく、今日という日を一緒に迎えることができた喜びを伝え、思い出を共有していく親族紹介。
名前を呼ばれた人は、少し照れくさそうな笑顔で周りを見渡します。
まるで窓から部屋中を照らす春の光のような、やわらかで穏やかな時間でした。

親族会のあとは、ゲストが全員が集まり人前式です。
ゲストが見守るなか、新婦がご両親とともに新郎のもとへ向かいます。


人前式はゲストの前で結婚を誓い、承認してもらうセレモニーです。
お二人が選んだ承認の方法は、ゲストにひとつずつ配られたパズルのピース。
これから2人で生きていくことを誓ったあと、結婚承認の証として順番にパネルにピースをはめていってもらいます。



最後に、新郎新婦が1番大きなピースをはめてパネルが完成。
ハネムーンで訪れる予定のセブ・マクタン島の青い空と海があらわれました。

晴れて夫婦となったお二人が先頭を切り、パーティー会場へ移動します。
いよいよ「春のお花畑」でパーティーの始まりです。
「今回のパーティーはみなさんに感謝の気持ちを伝え、幸せな時間を過ごすことが目的です。でも自分たちのためだけでなく、誰かのためにもなる結婚式にしたい。そう考え、エシカルを取り入れました」
エシカルの説明や、それを選んだ自分たちの想い。
たくさんの伝えたいことを1枚の紙にまとめ、志桜里さんがウェルカムスピーチを読み上げました。
「地球に優しく、つくり手の支援につながるという思いが込められたエシカル。今日、来てくださったみなさんの行動も、他の誰かの笑顔につながっています」

俊介さんの乾杯と同時にパーティーが始まりました。
春キャベツや新たまねぎなど春を感じる食材が使われた料理が運ばれ、新郎新婦も思い思いに各テーブルをまわっていきます。
ゲストからドレスを褒められるたびに「これは、バングラデシュで手刺繍されたものでね…」と紹介していく志桜里さん。
このウェディングに込めた思いを、ゲストとシェアするあたたかい時間です。



ウェディングケーキにも、お花がたくさん。
エディブルフラワーをあしらったケーキに、ゲストからも歓声があがりました。

そして今回のウェディングでは、新郎新婦が企画した「お花」をテーマにしたものが、もうひとつ。
ドライフラワーとリサイクルガラスのボトルを使ったワークショップです。
福祉の専門学校で出会ったお二人が距離を縮めるきっかけとなったのが、地域の交流サロンでのプログラムづくり。
「どうすれば相手に楽しい時間を過ごしてもらえるのか」を考え続けているお二人だからこそのワークショップです。

「選ぶお花も、詰め方にも個性が出るね」
ボトルにドライフラワーを詰めていくというシンプルな作業。
そんな話をしながらゲストのみなさんは楽しそうに、そして真剣にフラワーボトルを作っていきます。
今日の幸せをドライフラワーに乗せ、小瓶に閉じ込めるように。
「ああ、この瞬間をおぼえていたい」
志桜里さんの口から、ふとこぼれた言葉。
少しでも多くの瞬間を切り取れるよう、カメラのシャッターを切る手にも力が入ります。




新郎新婦が始まる前から「終わってほしくないなぁ」と笑っていたウェディングパーティー。
驚くほどあっという間に時間が過ぎ、最後に新郎新婦からご両親へ、今日一番伝えたかった感謝の気持ちを手紙で贈りました。
「大切な人に感謝の気持ちを伝えるために、ウェディングがしたい」
最初から、ずっとそう言い続けていた新郎新婦。
その思いはちゃんとウェディングという形になり、手紙という言葉に乗せて、届いていたのではないでしょうか。

そして、お見送りの時間。
ひとりひとりに挨拶をして、フェアトレードのコットンバッグに入ったお土産を手渡していきます。


会場の外でゲストのひとりが、コットンバッグに結ばれたタグを見ながら友人に話しかけます。
そこにはフェアトレードの簡単な説明と、バッグを作った途上国の女性が、生産技術を身につけ販売することで、誇りを持って自立できるようになったストーリーが書かれていました。
「エシカルって、こういうことなんだよな。いいよね、こういうの」

新郎新婦が伝えたかったエシカルは、ちゃんと届いていました。
今日、この春のお花畑から確実にその綿毛を飛ばし、遠くへ。そしてまた別の場所で、きっとエシカルの花が咲いていくのでしょう。
俊介さん、志桜里さん。
エシカルウェディングに出会ってくれて、私たちを見つけてくれて、ありがとうございました。

どうぞ、末永くお幸せに。
May we walk in beauty!
